けもこびるの謎に迫る!
 この記事は、水谷誠氏(故人)による高橋留美子先生のペンネームについての考察で、初出は「高橋留美子 研究資料報告 第1号」(1994年、時計坂通信社刊)です。

 津本さんが、先達のイベントで津本さんの好みではないけれど、まあわりと可愛い女の子に「何故高橋先生が、けもさんと呼ぱれるのか知ってる人はいませんか」と訊かれたそうである。
 それに対して津本さんは、ぼくは知らないし他の人も多分知らないだろうと答えたそうだ。
 そんなことはない、と言いたいところなんだけれど、実はやっぱりぼくも含めて会の中の誰もその理由を知らなかった。高橋留美子FCといった類のものは10年も15年も前からあった筈なのに、あいつら一体何をやってたんだと言いたくなるけれど、あいつなんて呼べるような人は一人もいないし、第一あまり作品とは関係ないことだから皆そういう風には言わないのだそうだ。
 その後話合った結果、本当に正確なところはやっぱり判らないのだけれど、それでもある程度までは判っているらしいのでその事実関係のみを整理しておくことにします。

「けも」関連年表

1975年9月 「虚塵の星」(作画)のペンネームとして“のさかけも”を使用
1976年6月 「風塵」のペンネームとして“けも・みとめ”を使用
1977年5月 “けも・こびる”に改名
1977年7月 “けも・こびる”のサイン(通称“けもマーク”)初出
1978年5月 プロデビュー決定。ペンネームは本名の“高橋留美子”
1978年11月 「不良青年団」発表。ペンネームは“けも・こびる”
1978年12月 「けもの24時間」発表
1980年11月 「スパークリングカレンダァー」(最後の“けも”名義の作品)発表
1982年3月 「けも・こびるの日記」第1回発表
1984年5月 「けも・こびるの日記」終了

「けも」関遵資料
Q. ペンネームの由来を教えて下さい。
A. こびる、みとめは名前を逆さに読んだもの。けもについては先生の高校時代にクラスで起こったある事件が元になっているということしか判りません。(『びよびよ』創刊号より)

 アナグラムってありますよね。あの、名前の入れ替え。あれを元にして作ったということだけで...(『うる星やつらオンリー・ユー』試写会、東京・千代田公会堂(1983年2月6日)にて)

平井:『けもの二十四時間』という漫画が「ダストスパート」に載っていますが、あのけもというのはいったい何だろうと読者がとても疑問に思っているけど、絶対に留美子さんは答えないということですね。
高橋:ええ、恥ずかしくて言えません。
平井:あれはなまけもののけもではないかという説もあるそうですが。
高橋:いやあ、もっとしょうもないものです。
平井:これだけは死んでも言えないと(笑)。
高橋:わかってみるとあまりにもバカバカしいので興ざめになりそうで...
(『SFアドベンチャー増刊平井和正幻魔宇宙』より)

 以上を整理すると、(1)アナグラムで作った。(2)判ってしまうとすごくぱかばかしいことである。(3)新潟中央高校の二年生(1974年)のあるクラスで起こった事件が元になっている。(4)先生にとってとても恥ずかしいことである。

まず(1)だけならいくらでも出来る。これは前にも書いたけれど先生がファンだと言っている池上遼一さんも手塚治虫さんもK.E.M.0は含んでいるし、両者に共通するのはK.E.A.M.0だけ。使用回数も同じとなると丁度KEMOが残る。しかしこれならそれほど恥ずかしいことでもない。「おれはこの二人を乗り越えてやるんだあああ」とか考えていたとしたら少しは恥ずかしいかも知れないけれど、だったらそこの部分だけ省いて説明すれぱいいのだから。(2)を考慮に入れると、例えぱKOME(米)を入れ替えて作っただけとかいう話しだとすごくばかかばかしいし、説明しているところ想像するとちゃんと恥ずかしくもあるのだけれど“米”をペンネームにしてどういう意味があるのかよくわからない。新潟の在郷に古くからある言い伝えか何かかもしれませんね。人に言ってしまうと効力がなくなるとか。でも女子高の教室に手塚治虫とかコシヒカリとかはあまり関係なさそうだから、結局問題になるのは(3)なのですよ。1974年の新潟の女子高2年の教室で起こりそうな事件。川瀬さんの説だと(あまり上品な話ではないので割愛)ということなんだけどそれが先生のあだ名になってしまう理由がわからない。まあ結局はやっぱり全然わからないということですので後は各自がんばって解明してみて下さいな。正解が出たとしても先生はそれと教えてくれないとは思いますけどね、多分。

 何年か前の『ファンロード』(ラポート)の「今月の高橋留美子」に、当会の飯島尚広君がKEMOの由来について予想し投稿し、掲載された。それは、例の高橋さんのサインの「留」の文字の上部が、平仮名の「けも」に似ている、というものでした。(播磨谷真)『熊猫通信ワイド版』(1990年・時計坂通信社刊)から

高橋留美子 …… 本名
けも・こびる …… KEMO 子美留
けも・みとめ …… KEMO 美留
のさかけも …… のぽる 崎 川 KEMO
火事原逸機 …… 梶原一騎の当て字

KEMOの意昧を予想すると、


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